共働き夫婦が実践する 心の余裕を生む「手放す」習慣とは
日常に心の余裕を取り戻すために
仕事に育児、そして家事。共働きのご夫婦は、それぞれに多くの役割を担い、常に時間に追われているように感じているかもしれません。特に、お子様の成長とともに変化する生活リズムや、職場で求められる役割など、予測不能な出来事が多い中で、自分自身の時間や心の余裕を保つことは容易ではない課題です。
「もっとこうあるべきなのに」「他の人はできているのに」といった無意識の思い込みや、周囲の期待に応えようとすることで、知らず知らずのうちに自分を追い詰めてしまうこともあります。このような状況が続くと、心身ともに疲弊し、本来大切にしたい家族との時間や、自分自身の成長に向き合うエネルギーさえも失われかねません。
本記事では、多忙な共働き夫婦、特に日々奮闘されている方が、心の余裕を取り戻し、より自分らしく、家族との時間を楽しめるようになるための「手放す」という考え方とその具体的な習慣についてご紹介します。
なぜ心の余裕が失われてしまうのか
心の余裕がなくなる背景には、いくつかの要因が考えられます。
まず、完璧を目指しすぎる傾向です。仕事も育児も家事も、全てにおいて高い水準を保とうとすると、限られた時間の中でやることが膨大になり、常に焦りを感じることになります。特に、インターネットやSNSで目にする理想的なライフスタイルや育児像と自分を比較し、できていない部分にばかり目がいってしまうことも、心の負担となります。
次に、一人で抱え込んでしまうことです。共働きであっても、育児や家事の負担がどちらか一方に偏ってしまうケースや、パートナーに頼ることに遠慮を感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。また、「弱みを見せたくない」という気持ちから、大変な状況を周囲に伝えられずに孤立感を深めてしまうこともあります。
さらに、情報の洪水です。育児やキャリアに関する情報は溢れており、良いと言われる方法を全て取り入れようとしたり、ネガティブな情報に過度に影響されたりすることで、かえって混乱し、不安が増大することもあります。
これらの要因が複合的に絡み合い、心の余裕を奪っている可能性があるのです。
心の余裕を生む「手放す」という考え方
心の余裕を取り戻すためには、「何かを足す」のではなく、「何かを手放す」という逆転の発想が有効な場合があります。ここで言う「手放す」とは、決して諦めることや投げやりになることではありません。自分にとって本当に大切なことを見極め、それ以外の、心を重くしている荷物を意図的に下ろしていく作業です。
手放す対象は、物理的なものだけでなく、考え方や感情、あるいは他者からの評価なども含まれます。この「手放す」習慣を意識的に取り入れることで、心にスペースが生まれ、本当に価値を置きたいことにエネルギーを注げるようになります。
具体的に「手放す」べきものと実践方法
心の余裕を生むために手放すことを検討したい対象と、そのための具体的なヒントをご紹介します。
1. 完璧主義を手放す
「〜ねばならない」「〜であるべき」といった理想像への固執を手放します。
- 実践ヒント:
- 完璧の基準を下げる: 「〇〇でなければダメ」ではなく、「〇〇くらいできれば十分」と、合格ラインを意図的に下げてみます。例えば、食事は毎日手作りでなくても良い、部屋は常に片付いていなくても良い、など。
- 「まあ、いいか」を許可する: 全てを完璧にこなそうとせず、「まあ、いいか」と自分に許可を与えることで、気持ちが楽になります。
- 優先順位を見直す: 全てを高いレベルでこなすのではなく、本当に重要なこと、今日やるべきことの優先順位を明確にします。
2. 他人からの評価や期待を手放す
「人からどう見られるか」「期待に応えなければ」といった思いを手放します。
- 実践ヒント:
- 自分の価値基準を明確にする: 他人の評価ではなく、自分が何を大切にしているのか、何に価値を感じるのかを再確認します。
- ノーと言う勇気を持つ: 無理な頼みごとや、自分の負担になる誘いには、断る勇気も必要です。全てに応えようとせず、自分と家族のキャパシティを優先します。
- 他人は自分ほど気にしていないと知る: 多くの人は、他人の細かい部分まで気にしていません。自分が思っているほど、周囲はあなたを厳しく評価していないものです。
3. 一人で全てを抱え込むことを手放す
家事・育児・仕事の全てを自分でコントロールしようとする考えを手放します。
- 実践ヒント:
- パートナーと積極的に協力する: 家事や育児の役割分担について具体的に話し合い、お互いの得意なことや負担を考慮して協力体制を築きます。完璧な分担ではなく、「できる方がやる」「助け合う」というスタンスが大切です。
- 外部サービスや支援を頼る: ベビーシッター、家事代行サービス、地域のファミリーサポートなどを必要に応じて利用することも選択肢に入れます。一時的な利用でも、心身のリフレッシュにつながります。
- 頼ることを「苦手」や「弱い」と捉えない: むしろ、助けを求めることは、状況を改善するための賢明な判断であり、周りと協力して課題を乗り越える力でもあります。
4. 理想の姿や過去への執着を手放す
「育休前のようには働けない」「子供がいなければもっと自由にできたのに」といった理想や過去との比較を手放します。
- 実践ヒント:
- 「今の自分」を受け入れる: 環境が変われば、働き方や生活スタイルも変化します。過去の自分や理想の自分にとらわれず、今の自分にできること、今の環境で最善を尽くすことに焦点を当てます。
- 小さな変化や成長を認める: 完璧を目指さずとも、日々の中で起きる小さなポジティブな変化や、自分自身、あるいは家族の成長に目を向け、肯定的に捉えます。
- 未来への期待に焦点を当てる: 過去や失ったものに目を向けるのではなく、これからどんな生活を築いていきたいのか、どんな自分でいたいのかといった未来の希望に意識を向けます。
5. ネガティブな感情や情報過多を手放す
不安、焦り、罪悪感といったネガティブな感情や、必要以上の情報収集を手放します。
- 実践ヒント:
- 感情を書き出す、言葉にする: モヤモヤした気持ちや不安な感情を紙に書き出したり、信頼できるパートナーや友人に話したりすることで、気持ちが整理され、手放しやすくなります。
- デジタルデトックスを行う: スマートフォンやSNSから一時的に離れる時間を作り、情報の洪水から距離を置きます。比較や不安を煽るような情報からは意図的に遠ざかることも大切です。
- 自分を責めることをやめる: 上手くいかないことがあっても、自分を過度に責めないようにします。「今は大変な時期だから仕方ない」「ベストを尽くした」と自分を労わります。
手放す習慣を実践するためのステップ
- 現状を把握する: 何に追われているのか、何に一番心の負担を感じているのかを具体的に書き出してみます。
- 手放す対象を一つ決める: いきなり全てを変えようとせず、最も手放したいもの、あるいは手放しやすいものから一つ選びます。
- 具体的な行動を決める: 選んだ対象に対して、どのように手放すのか、具体的な行動を決めます。例えば、「完璧主義を手放すために、掃除は週に一度だけにする」など。
- 行動を実践し、振り返る: 決めた行動を実践してみて、心の状態にどのような変化があったかを振り返ります。上手くいかなかった場合は、別の方法を試したり、手放す対象を見直したりします。
- 小さな成功を積み重ねる: 一度に大きな変化を求めず、小さな「手放せた」という成功体験を積み重ねることで、自信につながります。
まとめ
共働きのご夫婦が、仕事と育児、家事のバランスを取りながら心の余裕を保つことは、簡単なことではありません。しかし、完璧を目指したり、一人で抱え込んだりせず、「手放す」という考え方を取り入れることで、日々の負担を軽減し、心にゆとりを生み出すことは可能です。
今回ご紹介した「手放す」習慣は、すぐに全てを実践するのが難しいかもしれません。まずは、ご自身の現状と向き合い、最も負担に感じていることから一つ、手放す対象を選んでみてください。そして、パートナーと協力しながら、ご自身やご家族に合ったペースで、できることから試していくことが大切です。
完璧でなくても大丈夫です。少しずつ心の荷物を下ろし、ご自身とご家族にとって本当に大切なものに目を向ける時間が増えることを願っています。