共働き夫婦が考える時短勤務とキャリア形成の両立
はじめに
仕事と育児、家事の両立は、多くの共働き夫婦、特に育児休業から復帰された方にとって大きな課題です。中でも、短時間勤務制度（以下、時短勤務）を利用されている方の中には、「この働き方でキャリアを築けるのだろうか」という漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
限られた時間の中で成果を出すこと、育児による予期せぬ対応に追われること、そして周囲との比較など、不安の要因は多岐にわたります。しかし、時短勤務であっても、キャリア形成を諦める必要はありません。この働き方ならではの視点を活かし、自分らしいキャリアを築くことは十分に可能です。
この記事では、時短勤務中のキャリア形成に関する不安に向き合い、両立を実現するための考え方や具体的なヒントをご紹介します。
なぜ時短勤務だとキャリア不安を感じやすいのか
時短勤務がキャリアに関する不安につながりやすい背景には、いくつかの要因が考えられます。
まず、物理的な時間の制約です。会議への参加が難しい、突発的な業務に対応しづらいなど、業務の進め方や関われる範囲に限界を感じることがあります。これにより、「重要な仕事から外されてしまうのではないか」「評価が下がってしまうのではないか」といった懸念が生じやすくなります。
次に、企業や組織の慣習や評価制度が、長時間労働を前提としている場合があります。時間当たりの生産性ではなく、費やした時間や物理的な存在感で評価される環境では、時短勤務者が不利に感じることがあるかもしれません。
また、育児や家事に多くの時間を取られることで、自己学習や情報収集の時間が確保しづらくなることも、自身の成長への不安につながります。同僚が昇進したり、新しいスキルを習得したりするのを見て、焦りを感じることもあるでしょう。
さらに、キャリアに関するロールモデルが周囲に見当たらない場合や、自身のキャリアパスが不明確であることも、漠然とした不安を増幅させる要因となります。
キャリア形成を諦めないための基本的な考え方
時短勤務中でもキャリアを築くために、まず大切なのは「キャリア」という言葉をどう捉えるかです。従来の「昇進・昇格」といった垂直方向のキャリアだけでなく、「専門性の深化」「関わる領域の拡大」「働く場所や時間の柔軟性の向上」など、多様なキャリアの形があることを認識することが重要です。
「キャリア」を多角的に捉える
ご自身のキャリアにおいて何を重視したいのか、改めて考えてみましょう。仕事を通じて実現したいこと、習得したいスキル、働き方の理想など、短期的な視点（例: 半年後、1年後）と長期的な視点（例: 3年後、5年後）の両方で考えてみることをお勧めします。これにより、目指すべき方向性が明確になり、漠然とした不安を具体的な目標へと変えることができます。
「ないもの」ではなく「あるもの」に目を向ける
時間の制約という「ないもの」にフォーカスするのではなく、時短勤務だからこそ得られる視点やスキル（例: 限られた時間で成果を出すタイムマネジメント能力、優先順位付け、マルチタスク処理能力、育児経験から得られる新たな視点など）といった「あるもの」に目を向けましょう。これらのスキルは、ビジネスシーンにおいても高く評価される可能性があります。
時短勤務中に実践できる具体的なキャリア形成アクション
1. 業務の効率化と成果の可視化
限られた時間で最大限の成果を出すために、業務の効率化は不可欠です。ルーティンワークの見直し、不要な会議の削減提案、ツールの活用など、効率化できる部分を探しましょう。そして、自分がどのような業務で、どのような成果を上げたのかを具体的に記録し、上司や同僚と共有することを意識してください。時間ではなく、成果で評価されるための土台作りです。
2. スキルアップの機会を見つける
自己学習の時間を確保するのが難しい場合でも、通勤時間や子供の就寝後など、隙間時間を活用してオンライン学習や関連書籍を読むといった方法があります。また、社内研修や資格取得支援制度など、会社の制度を積極的に活用できないか調べてみましょう。必須スキルだけでなく、将来的に関わりたい業務に関連するスキルを学ぶことも有効です。
3. 社内外のネットワーキング
社内のキーパーソンや、自分が目指すキャリアに近い働き方をしている先輩社員との関係を築くことは、情報収集や相談の機会を得る上で非常に役立ちます。また、社外のコミュニティや勉強会に参加することも、新たな知識や人脈を得て視野を広げることにつながります。SNSなどを活用して、同じような境遇の人と交流することも、孤立感の解消や情報交換に有効です。
4. 目標設定とフィードバックの活用
定期的に上司と面談する機会を設け、自身の業務目標とキャリアに関する考えを共有しましょう。時短勤務という状況を踏まえつつ、どのような役割を担い、どのような成果を目指したいのかを具体的に話し合います。フィードバックを積極的に求め、自身の成長のために活かす姿勢を見せることも重要です。
夫婦でキャリアについて話し合う重要性
共働き夫婦の場合、お互いのキャリアは連動しています。片方だけがキャリアについて悩みを抱えるのではなく、夫婦で定期的にお互いの仕事やキャリアに対する考え、将来の目標などを話し合う時間を持つことが非常に重要です。お互いの状況を理解し、サポートし合うことで、単なる家事・育児の分担を超えた、より強固なパートナーシップを築くことができます。どちらかのキャリアの転換期には、夫婦で話し合い、家族全体として最適な選択をするための検討が必要です。
心と体の健康を維持する
キャリア形成も重要ですが、大前提として心と体の健康が保たれていることが不可欠です。無理なスケジュールを組んだり、自分を追い込みすぎたりすることは避けましょう。完璧を目指すのではなく、「これで十分」と考えることも大切です。好きなことや息抜きになる時間を持つこと、質の良い睡眠を確保することなど、自分自身を大切にする時間も意識的に作りましょう。自己肯定感を保つことは、前向きにキャリアと向き合うためのエネルギー源となります。
まとめ
時短勤務中のキャリア形成に対する不安は、多くの共働き夫婦が直面する現実的な課題です。しかし、この状況をネガティブに捉えすぎる必要はありません。時間の制約があるからこそ磨かれるスキルや、両立を通じて得られる新たな視点もあります。
大切なのは、「キャリア」の定義を広げ、自分にとって本当に価値のあるものは何かを見つめ直し、具体的な目標を設定することです。そして、夫婦で連携し、心身の健康にも気を配りながら、一歩ずつ着実に進んでいくことです。
この時期ならではの経験を力に変え、あなたらしいキャリアを築いていかれることを応援しています。